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売上は結果論。オンワード樫山がデータで明らかにする、本当に効果的な店舗施策

アパレル大手「オンワード樫山(東京都・中央区)」は、2020年2月からABEJA Insight for Retailを、旗艦店を含む一部の店舗に導入しています。

「売上以外の客観的数値がなく、やっている店舗施策が本当に効果的なのか検証ができない」という課題意識からスタートし、どのようにデータ活用の文化を社内に広め、活用してきたのか。導入から成果が出るまでの歩みを振り返っていただきました。

お話を伺った方(文中敬称略)
・第二カンパニー ストア戦略Div.VMD担当  久能 正彦様(写真左)
・第二カンパニー オンラインセールスDiv.長 秋山 亜希様(同右)


売上は結果論。「なぜ売上を達成したのか」が分からないと店舗施策の再現性を上げることができない

秋山:当社は元々支店制度という形でエリアごとに店舗運営が任されていましたが、数年前から本部で統括し一貫した店舗運営を行っています。私の所属する部署では「any SiS」「Feroux」「any FAM」「SHARE PARK」の4ブランドを担当しており、その各ブランドの戦略・運営をブランドの垣根を超えて横軸で強化することがミッションです。

2年前からOP(Operations)/SV(Supervisor)/MD(Merchandiser)という役割分担で、「売上向上に向け、店舗のファッションスタイリストはどんな働きをするべきか?」「どういう役割分担をするべきか?」の最適化を目指してきました。

ところが、売上以外の客観的数値がないので、どうしても分析がしきれない。

そこで「何人入店したか」「何人声がけしたか」、その結果「何人に売れたか」を手で集計してみたこともありますが、人手もかかるし信ぴょう性も低い。それならば、デジタルの力を借りようと考えたのが最初のきっかけです。

久能:私はVMD(Visual merchandising)を担当しています。「どういった陳列にするのか」「什器はどう設置するのか」など、MD計画に沿ってお店づくりを支援するのがVMDの仕事です。

ですが、私たちVMD担当が内装やレイアウトを決めたあとに、「それに合わせてオペレーションをどう変えるのか」に踏み込むことができていなかった。 VMDは店舗運営の要素の一つでもあるので、私もプロジェクトに参画しました。

秋山:オンワード樫山は百貨店販売主体の歴史が長く、お客様にじっくり接客して、じっくり選んでもらうやり方が主流でした。

一方、私たちの担当するブランドはSC(ショッピングセンター)マーケットが主戦場のため、百貨店と同じやり方では思うような数字は作れないと感じていました。「接客力以外のところで売上を取る」ノウハウが必要だと思い、入店分析にたどり着きました。

久能:実は、このプロジェクト参画の前から「やっている店舗施策が本当に効果的なのか」検証ができないことに課題意識を持っていました。

VMD担当として施策を打って、売上目標を達成したらそれで「良かったね」で終わってしまう。売上って、結果論じゃないですか。「なぜ売上を達成したのか」が分からないと施策の再現性が上がらない。もしかしたらたまたま売上達成しただけかもしれないのに、同じ過ちをずっと繰り返してしまうことにもつながりかねない。

秋山:ABEJAさんのことは、当社の社員の紹介で無料セミナーに参加して知りました。印象に残っているのは、「ABEJA Insight for Retailはお医者さんです」という話です。

お腹が痛いことを人に相談した時に、いきなり「じゃあ腹を切りましょうか」って言われたらびっくりしますよね。「お腹が痛い」という結果の原因を探ってくれるお医者さんにかかる必要がある。

例え話ですけどドキっとしたのは、診断なしに手当てをしてしまっていることが、当社でもあると思ったからです。例えば「売上があがらないから、DMを打とう」など、十分な原因分析をせずに施策を打つこともありました。

データをとってあとは放置、にしないために。愚直にデータを元に会話を積み重ねることで組織が変わっていく

秋山:データ活用についてはかねてから議論があったのですが、「誰が、どこまでそれを使いこなしてやるの?」「時期尚早じゃない?」などの声があがっており、ツールを導入したまま放置になってしまうことへの懸念もあり、導入に踏み切ることができずにいました。

実は、もう一社並行して検討しているツールがあったのですが、ABEJAさんの方が導入後のサポートが手厚いと思ったので決めさせていただきました。新しいことに取り組むには、一緒に歩んでいただけるパートナーが必要だと思ったからです。

あとは、導入の意思決定から導入後の運営まで、取り組みに対する強い意志を持つ久能さんがいてくれたことが大きいです。新しい取り組みは、やらされている感覚ではきっと続けることができない。愚直に興味を示して、やり続ける、現場に言い続ける主体者が社内にいることが大切です。

導入当初は、内心、店舗のファッションスタイリストには「新しい仕事が増えて大変」という気持ちもあったと思います。実際、「面倒くさい」「データを見るのが好きじゃない」という声もありました。

ですが、毎週愚直にデータをみて旗艦店担当者やVMDからフィードバックし続けることで、「これだけ見てくれるなら、ちゃんとやろう」と思ってくれたのではないでしょうか。だんだんと一緒にやれる体制に変化していきました。

機が熟すのを待つのではなく、強力な推進者のもと、まず始めてみたのが良かったのではないかと、今振り返ると思います。

久能:VMDの仕事として毎週各店舗には足を運び、前週の振り返りと次週の計画を立てる会議をやっています。その会議で、ABEJA Insight for Retailのデータを基に、「じゃあ、次の週はこれをやってみましょう」という会話をするようにしています。

データを使いながらも、店舗のファッションスタイリストの感覚も大事にしています。「今週の予想はこうだから、マネキンにこの色を着せようと思っているけど、どう思う?」など、意見を聞いた上で最終的な意思決定をしています。

例えば今では「any FAM」アリオ亀有店の店長は、昨年度の売上・前週の店前通行量・天気・新型コロナウイルスの感染状況などの情報をベースに、時間帯別の売上予測を自分で立てています。朝礼などで、ファッションスタイリストに予測情報を見せながら「今日の一押しアイテムはこれで、そのためにこんなアクションをしよう」と伝えることまでやってくれています。

秋山:社内への発信の仕方も工夫しました。

カジュアルな相談や質問は、参加者が多いところだとしづらいので、私たちと旗艦店担当と、ABEJA Insight for Retailを導入している店舗の担当者だけが入っているチャットルームを作って、そこでコミュニケーションするようにしていました。

また、店舗毎のやりとりだけで終わらせるのではなく、定期的に各店舗のアクションや成功事例について共有をする場も設けました。他店舗の事例を知ることで、良い意味での競争関係を作れると良いなと思ったからです。

データを活用し、店頭レイアウトやシフトを最適化。仮説に基づいてPDCAを回し続けることで、もっと現場を巻き込んでいきたい

久能:SCでの売上をあげたいと考えた時にキーになるのが「フリー客」です。百貨店は明確な購入目的を持ったお客様が多く来店しますが、SCの場合はスーパーで買い物をするついでにふらっと寄る人が圧倒的に多い。

そうしたお客様の目を引くための施策として、店頭に大きなタペストリーを飾ったことがあります。以前にイタリアに視察に行った時の経験をふまえ、色をうまく使うことで人目を惹くことができるのではないかと考えました。

その結果、入店率が1~2%上がり、売上も上向きました。

以前は、こうした施策の効果検証をするための指標として売上しかなかった。それが、データを取れるようになったことで、施策が何に効いているのかよりクリアに分かるようになりました。今では、店前通行量が増えるタイミングで8店舗にタペストリーを導入し、売上拡大につなげています。

タペストリーを導入した店舗イメージ(オンワード樫山様提供)

久能:オペレーション面では、時間帯別に店前通行量と入店者数を把握して、それをシフトに反映しています。

例えばある店舗のデータを見ると、ファッションスタイリストの肌感覚よりも午前中に入店者が多く、かつ買上率も高いことが分かりました。そこで、早番シフトが1人だったところを2人に変更し、かつ午前中は店舗裏の作業はしないで接客に時間を割くように変えてみました。

その結果、売上が数パーセント上がっていることが分かり、「時間帯別売上を意識してオペレーションを再検討してみましょう」ということを他の旗艦店や全国に発信しました。

秋山:データを活用することに対する組織の意識がだいぶ変わったと思っています。

売上は、どうしても商品力に左右されますが、ブランド全体の調子が悪くても、必ず安定した売上を出す店舗はあります。そうしたお店は一体何がすごいのかを、入店率・来店者数・買上率など様々なデータから知ることができるようになり、商品以外の成功事例を、より他店舗へと活かしやすくなったと思います。

店舗レイアウトについて店舗のファッションスタイリストと会話をする時に「ただ何となく」や「雰囲気」ではなく、データに基づいてできるようになったことで、より説得力が増しました。

こうした会話を積み重ねる中で、もっとファッションスタイリストから「今週はこんな予測が立ちそうだから、こんなアクションをします」などの提案が出ると良いなと思っています。自分達が立てた仮説が当たると、皆どんどん楽しくなってくるはず。店舗の自主的なデータ活用が更に進むことを期待しています。

ABEJA Insight for Retailについて


取材・文:高橋 真寿美 写真:安宅 雄一

(2021年6月17日掲載「テクプレたちの日常 by ABEJA」より転載)

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