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テクノロジーアートで世界に知られる「Nobumichi Asai」。スタートアップのためにできること

2019年6月、for Startupsから1通のプレスリリースが発信された。それは、フェイスマッピングをはじめとするテクノロジーアートで世界的に知られる浅井宣通が、フェローとしてfor Startupsに参画することを告げるものだった。国内外で数々のアワードを受賞し、スピーカーとしても世界各地を飛び回る浅井が、世界を目指すスタートアップのために何かをしたいと志し、for Startupsと出会った。

世界が注目するフェイスマッピング作品の数々。グローバルに活躍する「Nobumichi Asai」

「Nobumichi Asai」が、世界で知られるようになったきっかけのひとつが、フェイスマッピング作品、“OMOTE”(2014)”だ。その斬新な表現は、一週間で500万ビューを記録し世界的な話題となった。その後、Nobumichi Asaiの作品は、常に話題をさらい続けた。2016年グラミー賞でのレディーガガ、ナイル・ロジャースとのコラボレーションによるフェイスマッピングは、世界の72億人の人々に同時放送され、大きな反響を呼んだ。2017年に発表した放射能をテーマにしたフェイスマッピング作品、「INORI(Prayer)-2017-」は500万ビューのバズを生み、Short of the year-Best of Experimental(ドイツ)ほか、国内外6つのアワードを受賞。2018年には、長編VR作品”攻殻機動隊virtual reality diver”が、ベネチア国際映画祭でBest of VRを受賞した。これらは、浅井の実績のごく一部だ。スピーカーとしても、ヨーロッパ、アメリカ、中国など世界各地のアートフェスティバルやカンファレンスに招聘され、グローバルに活動している。

インテル、ベネトンなど数々のグローバル企業ともコラボレート。その一つが、自動車メーカーのHONDAとのコラボレート作品だ。「WORLD IS FULL OF LOVE」と謳うこの作品は、世界中から「ラブ」、「ピース」が含まれるツイートを集め、その数を光の粒子に置き換えた。光はワールドマップ上を覆い、それをエネルギーに、ロボ・フラワーが美しい花を咲かせる。「ラブ&ピース」という形のないものを、ビッグデータのアプローチで可視化。企業改革に臨むHONDAが求める未来に向けたビジョンを、アート作品として表現したものだ。

「会社が取り組むリブランディングや改革プロジェクトは、現実のさまざまな社内事情から有名無実なものになりがちです。アートを用いることで、、現実の柵から離れて、みんなが共感できるビジョン、本質を表現できる可能性があります。」(浅井) Nobumichi Asaiの世界だ。

テクノロジーの進化の速さを目の当たりにし、スタートアップ領域での活動を志す

「自分はソリューショニスト」浅井は言う。「ソリューショニストとは、物事の本質にある問題を発見し、それを表現で解決します。私は、これまではエンターテイメントや広告の領域でそれに取り組んできました。成長ステージにより、グローバル企業との協業が増えてくると、世界中の人の共感を得る必要が出てきます。すると、単に商品や企業の宣伝をするのではなく、普遍的なテーマが必要になります。人間として正しいのか。社会として正しいのか。つまり真善美といったプラトン的な、普遍的な価値観があるかどうか?そのようなテーマに取り組んでいった結果今、手がけているようなアートとしての表現に自然になっていきました。」

浅井は国立東北大学の理学部を卒業し、テクノロジスト(エンジニア)としてのバックボーンを持ちながら、広告、エンターテイメント業界でプロデューサー、クリエイティブディレクターとして活動してきた。近年、プロジェクションマッピングや数々のクリエイティブワークで世界的に名前が知られるようになっていった。年々、テクノロジーのムーブメントが加速する中で、浅井の持つテクノロジースキルとクリエイティブスキルが融合し、より輝きを放つようになる。だが一方で、その進化のあまりの速さに、浅井自身が戸惑いを感じるようになっていった。GAFAやBATの登場で、政治や経済による社会システムの変化や、アートによる意識変革よりも先行して、テクノロジーが世の中を直接的に書き換えていくのを目の当たりにするようになったからだ。浅井は、アートだけではなく、社会実装の領域(スタートアップ)でも活動をしたいと考えた。なぜならアートは、人々の考え方に作用して行動を変えていくものだが、スタートアップは、政治よりも経済よりも、人間の意識よりも、先行して実世界を変えつつあるからだ。そして重要なのは、テクノロジーは純粋な進化を求めており、そこに「人間のためという」倫理的な視点や、価値観がない場合が多いということだ。

実際、大企業のR&D部門や最先端のスタートアップ企業とコラボレートして作品をつくる機会も増えていた。例えば前述の「INORI(Prayer)」は、大学の研究室とスタートアップ企業が共同で開発したプロジェクターを使い、最先端のテクノロジーをアートとして昇華させた作品だ。浅井は言う。
「様々な企業とコラボするなかで、世の中に対して、よりリアルフィールドでのアプローチが大事だと思いました。今まではアートとして表現していたけれども、自分自身が起業家になり、サービスとして自分のビジョンを表現してもいい。スタートアップ企業にインキュベーションのようなスタンスで関わるのもある。世界をより良くするための方法論はいろいろな方法論がある。それがfor Startupsに加わった動機です。」

for Startupsの多様な価値観に共感。クリエイティブ面でスタートアップを支援へ

そんな中、スタートアップ企業に効率よくアクセスできる方法がないかと探していたときに、たまたまWantedlyにアクセスし、for Startupsと出会った。「クリエイティブ面で、スタートアップを支援してほしい」というfor Startupsの申し出を、浅井は快諾した。

「私は、ブランディングとは、ただ単に有名にするのではなく、思想性を高めていくことが大切だと思っています。私が、ずっと今の世の中に対して感じてきたのは、拝金主義、テクノロジー至上主義が蔓延しているということ。資本主義は、人類の文明を圧倒的に進化させてきたかもしれないけど、一方で欠点もある。あらゆるものをお金という基準で評価してしまうことにより、目に見えない人間の精神的な価値を見失ってしまう危険性を持っている。テクノロジーも社会を進化させているように見えるけど、本当に人々の幸福度が上がっているのかどうかはとても疑問です。例えばSNSでコミュニケーションが便利になるように見えて、心は疲弊している。

またテクノロジー至上主義的な考え方にも注意が必要です。テクノロジーは進化そのものを目的としており、進化=善であるという価値観になりやすいです。そのため、テクノロジーが人間や社会にどういう影響を与えるかはあまり顧みられない傾向があります。過去には、核兵器や公害の問題、現在ではAIによるフェイクニュースやディープフェイク、人種差別や偏見の問題など、、必ずしもテクノロジーが人間の利益になるとは限りません。やはり、すべての人間の活動は、人間自体の幸福のためにあるはずなので、本末転倒になってしまってはいけないと思います。『人の幸福はどこにあるのか?』 分かりやすく言うと、それを考えるのがアート的視点といえるかもしれません。日本でそういった話をすると理想主義のように見られることがありますが、ヨーロッパに行くと、伝統的なヒューマニズムやアートとしての視点が自然に存在しているのを感じます。どちらが世界標準かという問題ですね。」

スタートアップの成長にも、そのような根幹となる思想性が必要だ。売上はもちろん大事だが、それが一番ではない。浅井はアートの視点で、スタートアップが社会に根付き、スケールできるように後押ししていく。

「私がfor Startupsを素晴らしいと思ったのは、『Startups first』『Be a Talent』『The Team』の3つのバリューを掲げ、価値観の多様性を失わないようにしいること。実際、それぞれの視点での貢献者を毎月、表彰していて、一方向に価値観が偏る危険性を自覚しているのだと感じました。人材もそう。多種多様な価値観を持った人がいます。会社として必要なパーツにはまる人を探すのではなく、個を受け入れ、多様性の力をシナジーさせるというカルチャーに感銘を受けました。優秀で若いスタッフが多く、古い日本の会社が持つ、硬直化した価値観から開放されているところにとても大きな可能性を感じています。」

その多様な個に、世界で活躍する「Nobumichi Asai」が加わった。

世界で成功するには、人類に普遍の価値観が必要。一緒にそれを考えたい

世界を目指すスタートアップに向けて、浅井は言う。

「日本は、言語の壁と海に囲まれていることから、ガラパゴスと言われます。海外で活動するようになって、確かにそれを強く感じるようになりました。もちろんそれは別な見方をすると文化的固有性でもあり、良い面もたくさんあります。だから世界を目指すスタートアップの場合は、まず日本で成功してから海外に行こうとするのは危険です。日本にマーケットフィットしたとき、海外ではアンフィットになっている可能性があります。最初から普遍的なビジョンを持つことはグロースする上で重要なポイントだと思います。

for Startupsが本気で、日本から世界に貢献する会社を生み出そうとしているなかで、そのようなビジョンや価値観を、一緒に深めていけたらと思っています。スタートアップが一気にグロースする可能性があるのは、インターネットで世界とつながっているから。思想的な狭さがあると、せっかくインターネットでつながっているのに、日本から出ていけなくなってしまいます。

そうした中で、ディープテックといわれる領域にはとても注目しています。マーケットありきではなく、SDGs的な地球規模の難題に対して、テクノロジーによるソリューションを見つけていくという『課題ドリブン』なアプローチは根源的であり、グローバルな可能性に満ちています。ある意味、便利さのためのテクノロジーは、すでに飽和しており、これ以上進化してもデメリットの方が大きくなりつつあります。これからは人類が抱えた課題に対してソリューションを与えていくことや、心の豊かさを価値にしていくことが求められているように感じます。

私自身も、数々の海外のプロジェクトをつくってきて、『日本で成功するのは難しいけど、世界で成功するプロジェクトを生み出すことはとてもシンプルである』と感じるようになりました。誰もが『そうだね』と思うことを、高いクオリティーで作ればいいと気づきました。高いクオリティーで作ることは、日本人はとても得意です。普遍的なビジョンと匠の技。それにテクノロジーという時代性を加える。そのことに気づいてから、つくった作品がありがたいことに海外で多く評価されるようになりました。」

実際、世界のいたるところで、「Nobumichi Asai」の作品が受け入れられている。この経験を、知見を、スタートアップのために存分に発揮するつもりだ。

「今はコンサル的なポジションでのアドバイスを中心に活動していますが、次のステップとしては、スタートアップ企業に対して、ビジョンに関わるところでコミュニケーションをサポートしていきたいです。素敵な可能性があるテクノロジーをビジネス化しようと起業したとき、それがどんな人類貢献になるのかと考え、ビジョンを立てて、バリューを考えることは、スタートアップにとても価値のあることだと思います。またそれをブランドCMやテクノロジーアートとして表現していけると良いなと感じています。そのようなことを、一緒にやっていきたいです。スタートアップの皆様ぜひお声をかけていただけたらうれしいです。」

「Nobumichi Asai」×スタートアップ。どんな価値が生まれるのか、世界中が、大きな期待を込めて見つめている。

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