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HOTEL SHE, OSAKAでレコードに針を落とす :ホテル空間でしかできない体験

あけましておめでとうございます。L&G GLOBAL BUSINESS, Inc.の龍崎です。

HOTEL SHE, OSAKAがオープンして以降、色々なところでメディアの方々のお世話になり、SHE,についての記事もたくさん書いていただけることがあったのですが、そんな中ある日エゴサしているとこんな素敵なブログをtwitterで見かけることがありました。

このShodaiさんという方とは、直接の面識もなく、共通の知人も特にいなかった方なのですが、一晩泊まっただけというShodaiさんが私たちの考えていたホテルのあり方というか、HOTEL SHE, OSAKAに持たせたかった役割を十二分に汲み取り、こんなにも簡潔に言語化してくれ、そして手間を惜しまずに記事にしてくださっていたことに衝撃を受け、とても感動しました。

有難いことにメディアなどで私たちのホテルについての考えを話させていただく機会もあるのですが、その時にうまく伝えられなかったこと、伝えても文章の制約上記事になれなかったような話が、いちゲストの視点から素敵な言葉で綴られています。ぜひ読んでみていただけると嬉しいです!

HOTEL SHE, OSAKAでレコードに針を落とす
:ホテル空間でしかできない体験

転載元:https://peacefullifeyoga.wordpress.com/2017/10/10/hotel-she-osakaでレコードに針を落とす-ホテル空間でしかで/

HOTEL SHE, OSAKAという弁天町に最近オープンしたホテルに宿泊した。このホテルは、手掛けたオーナーが現役の大学生だということがオープン当初からカルチャー系のメディアなどで話題になっていた。インスタジェニックで、ホテルのテーマはレコードとピザ。ホテルの共用スペースにレコードがセレクトされており、すべての客室にはレコードプレーヤーがある。


最初から2枚のレコードは客室に備えられており、それに加えてセロニアスモンクとネプチューンズの2枚を借りました。


「コト消費社会」におけるこれからの空間デザインの形

近年、デジタルテクノロジーが様々なサービスを変えている一方で、カルチャー・体験としてアナログなものが復興している。レコードの売り上げは増加している。コーヒーはハンドドリップで淹れて飲みたいし、ビールも醸造スペースが横にある場所で飲みたい。スマートフォンでも一眼レフでもなく「写ルンです」で写真を撮りたくなる。デジタルが良くない、アナログがいいという単純な話ではなく、与えられる体験の質が、デジタルとアナログなもので違う。

モノにお金を使う人が減っていき、経験にお金を使う人が(特に若い人の中では)増えていると言われる。いわゆるコト消費。だから今、どんなタイポロジーであれ空間をプロデュースする際には、「そこにしかないもの」「そこでしかできない体験」を提供する必要があるし、それらをクールにブランディング(例えばそれらの体験は、シェアしたくなるように設計)する必要がある。


ホテル空間での新しい価値提案のあり方

さてホテルという空間における「そこでしかできない体験」の幅って、どれだけあるだろうか?一流のグローバルブランドによるホテルなら、建築やサービスでそれを提供する。またそれが絶景のリゾートにあれば、立地環境と建築デザインのマリアージュによって都市生活では提供できない体験を生み出すことができる。そしてそれらは、プロデュースする側も享受する側にも、それなり以上の資本が必要になる。ホテル・リッツのようなラグジュアリーホテルのスタイルは体系化されているし、アマンのようなリゾート・ラグジュアリーも体系化されている。そしてそういったホテルは華やかだが少数で、都市に存在するホテルの大多数は、清潔で、安全という最低限のサービスを提供するということにフォーカスし(それ自体はとても大事なことであるけれど)、そこでしかできない体験の提供はない。新しい方法で、ゴージャスではなく、豊かな体験をプロデュースすることはできないのか?

それを提案して世界的なプラットフォームになったのはAirbnbやカウチサーフィンである。シンプルなアイディア、ITサービス、スケール感によって彼らは空間そのものを作らずに、「暮らすように旅をする」「旅先で現地の人たちと交流する」という体験を提供している。シェアリングエコノミー、ギグエコノミーとも言われるこういった新たなサービスが、ホテル業界とブツかり、世界における観光業の拡大も相まって、この時代に価値あるホテルってなんなのだろう?と問われているのが今。その答えのひとつが、今回宿泊したHOTEL SHE, OSAKAだった。


ライフスタイル体験のハードルを下げる空間としてのホテル

実際自分は今まで、レコードで音楽を聴いたことがなかった。針を落とすという言葉自体は聞いたことはあったけれど、実際にその感覚はわからなかった。レコードそのものが持つ魅力には惹かれていたし、レコードの売り上げが再び上がっているというニュースに納得もできたけれど、自分が手にすることはないのかな、と思っていた。プレーヤーを買うハードルはなかなか高い。ほとんどの人が、音楽を聴くこと自体は好きだし、習慣にしている。でも、レコードプレーヤーなんかにこだわる人はごく一部のフリーク。

だから、レコードに針を落として音楽を聴くという体験のように、普段家の中でやることで、経験したことのある若者が少ないアナログな体験で、かつトライのハードルがそれなりに高いものって、ホテルで提供できるそこでしかできない体験、価値になる。なるほどなあ。

例えば「写ルンです」などインスタントカメラで写真を撮ることって、レコードと同じくアナログでヒップな体験だけど、体験のハードルがレコードに比べてかなり低い。安いし、持ち運べる。大きなプレーヤーが必要で、たくさんの魅力的なビジュアルを持つジャケットからお気に入りのアルバムを選ぶことも、自分1人で体験することは難しい。その体験はハードルが高いから、そのハードルを下げる空間。それに適切な空間は、確かにホテルだ。

先月泊まった京都のANTEROOMもホテルなりの、そこでしかできない体験を提供していた。美術館やギャラリー以外でのアート観賞の豊かさを知った。著名な現代アーティストのネームバリューや、他にはない一点突破的なインテリアデザインのプロデュースで注目されているけれど、そのオリジナリティで注目されているけれど、アーティストのオリジナリティというよりは、アートのある生活の疑似体験に価値がある。アートコレクションも、多くの人が興味があるけれど、手を出すハードルの高い体験だ。

寝室にアートを掲げよう: アンテルーム京都の宿泊体験。名和晃平作品の価格。

だから現代のホテルの空間の価値って、多くの人が関心はあるけれど、体験の導入にハードルの高い体験の提供なのだと思う。そしてそれは、家の中での体験であるほど親和性は高い。宿泊体験を提供している唯一の空間サービスがホテルだから。


共用スペースを活かした空間・サービス設計

ちなみにHOTEL SHE, OSAKAのレコード体験で面白いと思ったことは、客室と共用スペースの関係だ。従来のホテルだと、一度チェックインしてから就寝までに共用スペースに出ることって、食事以外にほとんど無かったと思う。でもここだと、セレクトされたレコードを見るために共用スペースに自然と足を運ぶ。

ここのようにソーシャルホテル的な謳い文句のホテルの持つ共用スペースって、その空間にいることで利用者同士の交流が促される、といったインキュベーションオフィスやシェアハウスのような役割を目指しているように感じられる。このホテルもそのようなことがHPに書かれている。自分は一人旅をほとんどしないから、そういった交流にはあまり関心がない。パートナーと2人でホテル利用をするときは、2人で豊かな体験をしたい。でもそれって、閉鎖的に客室にずっといたいというわけではなくて、高度にデザインされた共用スペースは2人で楽しみたい。そう思っているとき、レコードを探しに共用スペースに出ていき、客室で普段聴かない音楽を2人で聴くという体験はとても楽しかった。自然に、ホテル空間全体を味わうことができた。行ってよかった。

テラスもイケてました。壁に囲まれて空が抜けていて、背の低い椅子とテーブルがあって、イスラム建築のパティオみたいな豊かさ。気持ちいい。

ところでこのホテルの事例をサンプルに、ジェネレーションZのITサービスからリアルビジネスの回帰について語った最所あさみさんの記事があった。これが導く先の未来は考えてみると結構面白い。長くなったのでそれについては別の記事で書こうと思います。


#この記事を書いた方

Shodai

@Ringoski

建築と都市デザインを学ぶ大学院生。建築、都市、現代アート、国内外サッカー、アウトドア、サウナ巡り、東南アジア諸都市動向。 サッカーはヴィッセル神戸とChelsea FC。ブログは推敲していません。I'm 24/architecture/urban design/art/football/outdoor

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*ご本人の許可の元、転載させていただいております。

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