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いい音楽って、ひとりのために徹底的につくられた音楽だと思う

アーティストのレコーディングに参加するプロのスタジオミュージシャンとして活躍していたこっしーこと越湖亮太(こしこ りょうた)さん(サイカ開発本部 Senior Engineering Manager)が、音楽にゆかりのあるサイカメンバーを招き、「創る」「使う」「繋がる」をテーマに対談する連載。

第1回となる今回は、国内外でバンドマンとして活動していたサイカ代表取締役社長・平尾 喜昭(ひらお よしあき)さんを迎え、「創る」をテーマに語らいます。

▼サイカ開発本部 Senior Engineering Manager 越湖 亮太

北海道出身。幼少期から叔父のギターに影響を受ける。中1の頃、叔父が使っていたギターを譲り受けたのをきっかけに本格的にギターを始める。都内の音楽専門学校に進学し、在学中よりスタジオミュージシャンとして活動を開始。7年間の音楽活動を経て、エンジニアに転身。現在は、サイカ開発本部でSenior Engineering Managerをつとめる。最初に弾いたギターはムスタング。

▼今回のお客様 サイカ代表取締役社長 平尾 喜昭

両親共にボーカル経験者の家庭で育ち、中1から自然と音楽の道へ。中3の時に出場した某社主催の学生コンテストで優勝。高校卒業後、音楽活動と並行して慶應大学総合政策学部に進学。学業の傍ら、日本と韓国においてバンド活動を展開する。卒業直前にサイカを起業。

それぞれの創作スタイルは今に続いているかもしれない

こっしー:平尾さんはバンドでボーカルと作詞・作曲を担当してたんですよね。

平尾:そうです。両親がボーカルをやっていたから本当はやりたくなかったんですが、中1の時組んだバンドにボーカルがいなくて。「じゃあ、俺が歌うしかないじゃん!」ってボーカルになりました。血なんですかね。ギターやってた時もリードギターがやりたかったし、目立ちたかった(笑)

▲サイカ代表取締役社長 平尾 喜昭

こっしー:僕もギターを選んでる時点で目立ちたかったんだと思います(笑)平尾さんの作曲スタイルはどんな感じだったんですか?

平尾:僕はめずらしく、詞先(楽曲制作において、作曲より先に作詞を行うこと)。

こっしー:おお、めずらしい。

平尾:先に歌詞を書いて、「この詞にはこのメロディーしかない」って感じで曲を作ってましたね。しっかり作り込んでデモテープをつくるようなことは1回もなくて、その場で即興で歌ってました。そこからバンドでセッションしていって、あとはよろしく! みたいな(笑)でも、曲構成はすごく計算して作り込む。

こっしー:結構直感的につくるんですね。

僕の場合は、ボイスメモに大量のギターリフやメロディーを溜めておいて、そのうちのひとつを膨らませる形で一曲全部つくります。楽器も打ち込みでつくり込んで、そのまま出せるくらいのレベルでデモテープに起こして、そこに歌詞をのっけてもらっていました。学校で音楽理論を勉強していたから、学んだ理論を試してみたりもしましたね。

平尾:音楽理論で、コードがずれていることを「あたってる」っていうじゃないですか。あたっているのを是とするか否か、どっちでした?

こっしー:僕はそこまで厳しくしてなかったです。

平尾:いつも大事な戦いの前に必ず聞く曲があるんです。Limp Bizkit(リンプ・ビズキット)の『TAKE A LOOK AROUND』って曲なんですけど、この曲あたってますよね。音楽理論的にはだめなんだけど、あたってることで怪しさが出てかっこいい。

こっしー:そう、音楽理論的にやるとあんまりうまくいかないんですよ(笑)結局、直感で思いついたもののほうが良かったりする。

平尾さんは大きなビジョンを描いてそこに向かうプロセスを詳細に考えて前に進めていく。僕は細かい部分まで完成度を突き詰める。ここらへん、お互いのいまの仕事のやり方に受け継がれている感じがしますね。

▲サイカ開発本部 エンジニアリングマネージャー兼ハイアリングマネージャー 越湖 亮太

なんのために音楽をやるのか

こっしー:バンドはいつ頃から始めたんですか?

平尾:中1ですね。中3の時に某社が開催する“あのイベント(笑)”に出演して優勝したんです。それからライブハウスのライブに出るようになっていきました。

こっしー:僕も中学からバンドを組んで、最初はX JAPANのコピーをやってました。本当はメタリカをやりたかったんですけど多数決で圧倒的に負けまして……。中学・高校と色々なバンドでやってたんですけど、高校の時、学生の中でやることに限界を感じ始めたんです。それから、東京で音楽を学んで地元に戻ってきたような社会人の方と一緒にやるようになりました。

平尾:限界を感じるのわかるなあ。僕も越湖さんと同じように中学の時に同級生とやることに限界を感じて、高校からメンバー募集の掲示板でメンバーを探し始めたんですよね。メンバー募集を「メン募」っていって、なぜか自分のことを「当方」っていう文化がある掲示板(笑)

こっしー:ああ、ありましたね(笑)

平尾:そこで集まったメンバーと一緒にバンドをやって、高校卒業後には音楽の専門学校にも通いつつ5年間くらい本気でやってましたね。

こっしー:僕も社会人の人たちとバンドやっているうちに北海道の音楽の専門学校から特待生で入学しないかと誘われたりしたんですけど、より様々な人が集まる場で挑戦をしたかったので、東京の音楽専門学校に進学することにしました。専門学校に入って最初に出会った人たちとバンドを組んで、ライブをしたりコンテストに出たりしてましたね。僕も最後にやっていたバンドは5年くらい続けていました。

平尾:コンテストの結果はどうでした?

こっしー:これが複雑なんですけど、最優秀個人賞みたいのは取れるんですよ。でも、バンドで1位を取ったことはなかったんです。

音楽業界って、コンテストの終わりにスカウトマンが楽屋に来て仕事のスカウトをくれたりするんですけど、ほかのメンバーがいる前ですよ。軋轢みたいのはちょっとありましたよね。

平尾:大会で賞を取った人たちだけを集めてできたバンドもありますもんね。元のバンドは大人の事情で解散させられたり。

こっしー:平尾さんが音楽をやっていた理由みたいのってあります?

平尾:イベントで演奏することになった時に、最前列に車椅子の男の子がいて、ものすごくつまらなそうに見てるんです。だけど、自分たちのステージになったらすごく楽しそうに手を挙げて盛り上がってくれて。

それまでは楽しさにのめり込むように音楽をやってたんですけど、その時に意識が変わりました。
音楽って、政治も経済も変えられないけど、人は変えられるじゃん。って。

これをきっかけに音楽で食っていこうと思ったんですよね。

続けることと、やめること

こっしー:中学の頃の夢は「武道館でワンマン」。昔の文集にそう書いてました(笑)

平尾:わかる。武道館のセットリスト自分で作ってた(笑)

こっしー:そうそう(笑)

平尾:僕の夢は「世界一のミュージシャン」でしたね。これ、高校の文集に書いてますからね。みんなが学園祭や運動会の思い出を書く中、俺一人だけ「世界をぶっ壊す」とか書いてるの。

こっしー:(笑)周囲の期待もありましたよね?

平尾:ありますよね。いちばん批判してたばあちゃんが最終的にはいちばん音楽やめることを悲しがってましたもんね。「紅白出ると思ってたのに」って。

いまだに地元に帰ると、通ってたラーメン屋さんで「まだ音楽頑張ってる?」とか言われますよ。周囲の期待は大きかったんだと思いますね。

こっしー:僕もバンドをやめる時はじいちゃんからめっちゃ電話来ましたね。

でも、いざやめる時は結構すぱっとやめられたんです。僕らはボーカルが脱退することになって解散したんですけど、このメンツ以外考えられない、これ以上の出会いはない、と思っていたので。周りは新しいボーカルを紹介してくれたけど、別のメンバーでやるイメージが全然わかなくて。これは僕だけじゃなく全員一致だったので、解散することになりました。

平尾:僕、解散した日のことを覚えてないんですよね。

バンドで絶対やりたいことが3つあったんです。「全国ラジオに出る」「全国テレビに出る」「中箱(1,000人以上収容できるライブハウス)でライブする」っていう。

本当にラッキーが重なったんですが、キャパ1,000人以上の箱でライブして、FMラジオに出て、全国放送のテレビ番組に出て、最後の夢が叶った日の夜、メンバーだけの打ち上げの場でやめるって言いました。その日のことをなんにも覚えていなくて、どこでどう切り出したのかよく思い出せないんですけど。

ただ、一緒にバンドを始めて5年間ずっと一緒にやってきたドラムが、横で震えて何も言えなくなっている姿だけは覚えているんですよ。それで終わりました。

車椅子の男の子が楽しんでいる姿を見てからこの時まで、自分の人生には音楽しかなかったので、何もかもを失くすくらいの大きい決断でしたね。

プロフェッショナルの仕事

こっしー:音楽ってすごくプロフェッショナルな仕事だと思うんですけど、平尾さんはいま、プロフェッショナルだなーと思うバンドいますか?

平尾:僕の中でバンドって、アーティストとプロフェッショナルの掛け算なんですよ。プロフェッショナルでいうと、TOTO(トト)とか。ボーカルだと佐藤竹善さんとか玉置浩二さんはうまいな〜と思いますね。若手だとSuspended 4th。あとONE OK ROCKは超練習してると思います。すごく頑張ってる感じがする。

こっしー:平尾さんにとっての「プロフェッショナル」っていうのは「努力してる」ってことですか?

平尾:努力しきってる」かな。

バンド時代にご指導いただいた佐藤タイジさんがギターボーカルを務める、THEATRE BROOK(シアター・ブルック)っていうバンドはまさにプロでしたね。「同じ8小節を30分練習しろ」って言われたんですけど、途中からお経唱えてる感じになるんですよ。良い意味でちょっと狂ってる。こういうのをやり切ってるのがプロフェッショナルだなーと思いますね。越湖さんはどうですか?

こっしー:目の前で見てプロだなーと思ったのは、ギタリストのSteve Vai(スティーヴ・ヴァイ)ですね。リハーサルを見せてもらったことがあったんですけど、何時間リハするんだろうってくらい丁寧に、すごく細かい音作りをするんです。

平尾:日本人ではいます?

こっしー:うーん……あんまりいないかなあ……

平尾:俺のほうがすごいって?

こっしー:いやいや(笑)

平尾:ぶっちゃけいまでも思うことあります?

こっしー:正直……、まだありますよ(笑)

平尾:これはすごくいい話(笑)

こっしー:アーティスト性でいうと誰ですか?

平尾:アーティストとしてすごいと思うのは、中島みゆきさん、吉田拓郎さん。「命削ってんな」って思うんですよね。あと、キングクリムゾンの『21世紀の精神異常者』をはじめて聞いた時は全身が痺れて動けなくなりました。

70年寿命があるのに、1年、2年と命を削って差し出している。そういうのを感じるとアーティストだな、と思います。

いい音楽って?

こっしー:音楽って、すごく計算して、たくさんの人に良いって言われるものを作ろうとか、逆に人の反応なんてどうでもいいから自分の理想を貫いてやろうとかあると思うんですけど、平尾さんは「いい音楽」ってなんだと思います?

平尾:僕、これは明確にあるんですよ。2つあって、まず「イヤフォンを外したあともその人の人生の中で鳴り続けている音楽」は名曲だと思うんですよね。たとえば、ビートルズのLet It Be。ほぼ聴かないけど、ずっと自分の中にある。

もうひとつが「ひとりのために徹底的につくられた音楽」。これは専門学校の先生から言われたことなんですけど、「100人、1000人のお客さんみんなのために歌うな。みんなのためにつくってみんなのために歌っても、誰にも響かない。誰かひとりのためだけにつくれ」って言われたんですよね。

こっしー:同意です。いい音楽って、「一人だけでいいからちゃんと誰かに刺さって、その人の気持ちを変えられる」音楽なんだろうな、と思います。


◇編集後記

文章を書いていても「特定の誰かのために書け」と言われることがあります。音楽でも、ものづくりでも、それは同じなのかもしれません。私たちが扱うSaaSのプロダクトも、ともに成果を出したいお客様のため、ひいては企業のご担当者一人のためにやる。そんな姿勢があるからこそちゃんと届くプロダクトになるんじゃないか。そんなことを考えさせられる対談でした。(編集:川畑)

次回は、「音楽を使って人は理解しあうことができるのか?」
「使う」をテーマに対談します。

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