リンクアンドモチベーション 柴戸

カオスから脱却し、開発パートナーと一体化したアジャイル組織を立ち上げるまで|TECH TEAM BUILDERS #6 リンクアンドモチベーション 開発責任者柴戸氏・ 採用責任者尾上氏

2000年創業のリンクアンドモチベーションが、HRテックカンパニーへの道を歩み出しています。組織・人事に特化したコンサルティングファームとして知られる同社。2016年に、従業員エンゲージメントを測定する「モチベーションクラウド」、2019年には「コミュニケーションクラウド」「チームワーククラウド」と、新サービスを同時リリースするなど、HRテックカンパニーとしての存在感が高まる同社。

今回、お話を伺ったのは、エンジニア社員一人目として入社し、現在開発責任者を務める柴戸純也氏と採用責任者の尾上徹氏。エンジニア不在時の混乱や開発体制再構築の苦しみを経て、HRテックカンパニーへと脱皮を図る同社の取り組みを聞きました。

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株式会社リンクアンドモチベーション
開発責任者
柴戸 純也氏

1978年、福岡県生まれ。明治大学卒業後、大手IT企業に入社。フリーランスを経て、アルディート、ジーニーの執行役員(Vp of Engineering )を歴任。2018年9月、リンクアンドモチベーションに入社。現在はモチベーションクラウドシリーズのプロダクト開発責任者を務める。
https://www.wantedly.com/id/junya_shibato

株式会社リンクアンドモチベーション
採用責任者
尾上 徹氏

1982年、生まれ。青山学院大学卒業後、日本ヒューレット・パッカードにシステムエンジニアとして入社。アクセンチュアに移り、大手企業に対するコンサルティングに従事。2017年6月、リンクアンドモチベーションに入社。開発組織の立ち上げ後、新サービスづくりに携わり、現在は採用責任者として、モチベーションクラウドシリーズの内製化に向けたエンジニア採用、採用広報を牽引する。
https://www.wantedly.com/id/tohru_onoe

就任早々、新規開発を2カ月間停止した理由

 

——本日はお時間をいただきありがとうございます。まずはそれぞれの職務内容をお聞かせいただけますか?

柴戸氏(以下、敬称略) 社内的にはユニットマネージャーという肩書きで、CTOやVPoEの職域をカバーしています。対外的にはモチベーションクラウドシリーズの開発責任者を名乗ることが多いですね。

尾上氏(以下、敬称略) 採用責任者の尾上です。2017年の入社以来、社内に開発組織が存在しなかった時代から、エンジニア社員一人目の柴戸を迎え、現在に至るまでの開発組織の変遷を間近で見ていました。本日はよろしくお願いいたします。

——こちらこそよろしくお願いいたします。本題に入る前に現在の開発体制の内訳を教えてください。

尾上エンジニア、プロダクトマネージャー、UI/UXデザイナーを含む開発組織全体の人数は社員だけで52名。エンジニアはその半数の26名です(いずれも2021年3月現在)。このほか約20名の開発パートナー様にプロジェクトに加わっていただき、モチベーションクラウドシリーズの開発にあたっています。

——尾上さんが入社された2017年6月は、モチベーションクラウドがリリースされて約1年後のことです。柴戸さんが入社されるまでの間はどのような状況だったのでしょうか?

尾上 モチベーションクラウドは開発パートナー2社に委託する形で開発を進めていました。当時は社内に開発リソースはまったくのゼロ。完全にこの2社にお願いする形で開発を進めている状況でした。

——なるほど。開発は外部に丸投げに近い状態だったのでしょうか?

尾上 弊社内に技術知識を持った社員がいなかったため、開発パートナー様に丸ごとお願いせざるを得ない状況でした。当時は、フロントエンドとサーバーサイドで開発パートナー様が分かれていたのですが、弊社内でQCD管理が出来ておらず、蓋を開けてみると障害の発生や納期の遅延が発生していました。QCD管理を徹底して生産性の向上を図ろうと試み、さらなる打開策に出たのですが、これがかえって火に油を注ぐ結果になってしまいました。

——火に油を注いでしまった打開策とはどのようなものだったのでしょう?詳しく聞かせてください。

尾上 今思えば短絡的な考えだったのですが、納期までに開発が間に合わないのであれば、人手を増やせばいいと考え、プロジェクトに加わる協力会社やフリーランスエンジニアの数を増やしてしまったんです。マネジメント体制も整備されない中で、開発者だけを増やした結果、人もコストも増えたが生産性は劇的に下がっていきました。

——こうした状況を打開するために柴戸さんが入社されたわけですね。

尾上 そうです。そんなとき運良く出会ったのが柴戸でした。求めていたのは弊社ミッションへの共感性が高く、技術力とマネジメント力を兼ね備えたCTOクラスのエンジニアです。そもそも候補者になり得る人材は市場にほとんどいないですし、あえて火中の栗を拾ってくれるような方はさらに希少な存在。ですから開発経験が豊富かつ、開発組織をスケールさせた経験を持つ柴戸の入社は、リンクアンドモチベーションにとって幸運というほかありませんでした。

——柴戸さんはなぜ「火中の栗」を拾おうと思われたのですか?

柴戸 「モチベーションエンジニアリング」という独自のノウハウによって、「組織と個人に変革の機会を提供し意味のあふれる社会を実現する」というミッションに惹かれたのも理由の1つですが、それだけで入社を決めたわけではありません。先ほど尾上が伝えたような厳しい状況を乗り越えれば、ITをツールや付帯品としてではなく、ITと企業戦略を一体化させることができるのではと考えたことが1つ。そしてもう1つが、もしコンサルタントが持っている豊富な知見をITによって拡張し、データを用いて効率化できたら、より多くの企業の課題解決に貢献できると考えたからです。容易でないことはわかりましたが、やってみる価値はあると思い入社しました。

——入社直後の率直な感想を聞かせてください。

柴戸 ゼロからのスタートというよりマイナスからのスタートといったほうが適切かと思うほど、状況は混沌としていましたね。私が入社した時点で、社内のプロダクト責任者と開発パートナー様が5社、フリーランスエンジニアが数え切れないほど在籍されている状態でしたから。誰が何をしているのかを切り分けるまでに1カ月ほどかかってしまいました。その後、開発責任者として最初に下した判断が新規開発を2カ月間止めるということです。正直にいうと、一時、功を焦って技術的な成果を出そうと思ったこともありました。しかし混乱の真っ只中で「キレイなコードを書こう」「テストコードはきちんと書こう」などと主張したところで誰の耳にも届きません。そこでまず、この状況を生み出している組織的負債と向き合おうと考えを改めたわけです。

——勇気ある決断でしたね。

柴戸 開発生産性を高めてほしいと言われ入社したのに、最初の決断が「新規開発を止める」ですから、皮肉というほかありませんでした。しかし、それ以外に選択肢が見当たらないほど厳しい状況だったんです。

「技術的負債」の前に立ちはだかる「組織的負債」

 

——新規開発を止めた後、どのようなことに取り組まれたのですか?

柴戸 当時、総勢30人から40人ほどのエンジニアがプロジェクトに携わってくださっていたと思います。我々のプロジェクトに関わり始めた時期や担当する開発領域によって、不満や対立の火種が燻っている状況でした。まずは現状を把握し、様々な方と話し合い、エンジニアの数の最適化、役割やプロセスの整理などを行いました。新たな開発体制が形になり出したのは、2019年の3月ぐらいだったと思います。この間、中途採用や総合職で入社した若手社員の中から素養のありそうな社員をエンジニアチームに異動してもらうなどして、ようやく社内に10人ほどのエンジニアチームを作ることができました。

——エンジニアの中途採用にもご苦労されたのでは?

柴戸 そうですね。募集をかけてもまず集まらないので、エージェント経由やダイレクトリクルーティングと並行し、私のリファラルも駆使し採用していました。当時はまだエンジニアに対するブランディングもできていませんでしたし、働き方、報酬、どれをとってもエンジニアの採用を念頭においたものではありません。そのため、当初はかなり苦戦を強いられました。

——当時のエンジニアの採用基準を教えてください。

柴戸 モチベーションクラウドが目指しているビジョン、及び事業目標や作り上げたい開発文化、その実現に向けた課題を赤裸々にお話しし、理解してくださる方を採用していました。イメージとしては、得意でない技術領域の開発をお願いしても「必要であれば勉強します」といって引き受けてくれるエンジニアです。当時は今ほど、環境が整っているわけではなかったので、よりマインドや人物像、ビジョンへの共感性を重視した採用を行っていました。

リンクアンドモチベーション社の開発文化を明記した採用ピッチ資料

——開発組織を築くにはマネジメント層の拡充も不可欠です。チームをリードする上位レイヤーの採用はいかがでしたか?

尾上 現場で開発にあたるエンジニアの採用と並行して、柴戸と共にマネジメントを担ってくれるエンジニアリングマネージャーやテックリードの採用にも力を入れていました。こちらも苦戦しましたが、2019年の上旬ごろにエージェントを通じて開発組織の核を担ってくれる方を2人ほど採用でき、ようやくエンジニアを受け入れる体制が整い始めました。

——開発体制の再構築中に、新サービスとして「コミュニケーションクラウド」と「チームワーククラウド」を同時リリースされましたね。かなり大変だったのでは?

柴戸 ええ。グループ全体の事業戦略に基づく決定でした。とはいえ、さすがに再建中の開発組織に新規サービスの開発を組み込むことはできません。そこで信頼している開発パートナー様に私が直接ディレクションする形でリリースに漕ぎ着けました。いま振り返ると2019年は組織面では中核メンバーが獲得できたターニングポイントであり、プロダクト開発面でも節目の年だったと思います。

100名の技術者を擁するHRテックカンパニーへ

 

——その後は、順調にエンジニアの組織化を進めることができたのでしょうか?

尾上 そうですね。2020年は、これまで手薄だった開発の状況や取り組みを外部に知らせるために、採用広報にも力を入れられるようになり、直接応募してくださるエンジニアが増え始めました。とはいえまだまだ数は多くないので、Wantedlyを活用した採用記事やテックイベントなどでの露出を増やし、ブランディングを強化していくつもりです。

*リンクアンドモチベーション社のエンジニア広報記事
リンクアンドモチベーション Engineer Story
Entrancebook for engineer.

 

——現在は3つのプロダクトを開発されています。新たな組織的負債を生み出さないために工夫されていることがありますか?

柴戸 過去の反省を踏まえ、開発パートナーのみなさんと一体化したアジャイルな開発体制を構築しました。工夫した点があるとすれば、社内エンジニアと開発パートナー様の間になるべく壁を作らず同じ情報を共有すること、開発パートナー様の立場を理解してwin-winな関係構築を心がけたことが挙げられると思います。こうした取り組みによって相互理解が深まりましたし、技術的負債は、協力して解決すべき共通の課題として認識できるようになりました。同時に社内のエンジニアもミッションやビジョンを自分ごととして考えるようになったと感じます。

——今後はどのような開発組織を目指されますか?

柴戸 いま以上に内製化を推し進め、2023年までに社内のエンジニアを100名体制にまでにしたいと考えています。モチベーションクラウドシリーズの拡充でサブスクリプションビジネスの売上比率を高め、収益構造の転換を図るのが狙いです。

——収益構造の転換を図る上で、組織としての課題はありますか?

尾上 開発を担う若手と、マネジメントを担うシニア層が厚くなってきたので、ミドル層の拡大が急務です。先ほども触れた通り、採用広報を通じてリーダークラスのエンジニアにリンクアンドモチベーションの存在や魅力をいかに訴求するかがカギとなります。リンクアンドモチベーションがHRテックカンパニーへと変わりつつある現状を、あらゆるチャネルを通じて発信し、エンジニアへのブランディングを強化していくつもりです。

——最後にエンジニアの採用・組織づくりに悩むベンチャー企業にアドバイスをお願いします。

尾上 一言で申し上げると、どんなに開発リソースが逼迫しているからといって、自分たちが目指すミッションやビジョンへの共感度が低い人の採用は控えた方が良いと感じています。普遍的な価値を共有しているエンジニアであれば、大きな変化が起こっても必ずついてきてくれるはず。そうした状況を作るためにも、全社で掲げているミッションやビジョンを、開発組織向けにさらにブレークダウンして言語化するのはオススメです。

柴戸 経営リソースが乏しい段階の企業は、キャッシュフローが滞れば倒産の危機に直面するかもしれません。時には思いもしなかった方向に振り子を振らざるを得ないこともあるでしょう。無論、振り子の振幅が大きくなればなるほど、副作用も大きくなります。大事なのは副作用がもたらす弊害を察知してケアすること、それ以前に、ミッションやビジョンに共感してくれるエンジニアを集めることが重要です。尾上の言うように、いくら技術力は高くても、とくに初期のフェーズでは、組織を構成するエンジニアの人物面を軽視した採用は避けるべきだと個人的には思います。

<柴戸氏・尾上氏推奨。シード期、アーリー期の技術責任者にお勧めする情報源>

 

『ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか』(ピーター・ティール著)
昔の上司から推薦された書籍なのですが、当時、私は新規サービスの立ち上げに従事しており、
どのようなサービスコンセプトにするか、サービス価値をどこに置くかを考える際に役に立ちました。

 

『クラウド誕生 セールスフォース・ドットコム物語』(マーク・ベニオフ著)
弊社のモチベーションクラウドの立ち上げ当初、B2Bプロダクトで成功しているSalesforce様の事例を元に組織構成やビジネスプロセス等を検討しており、何度も読み返した書籍です。

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